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わし

和紙

東野辺 薫

「東北文學」1943(昭和18)年4月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 35,557 字 · 70 页

青空文庫

せんと惣三は、顔を上げないで榾くべばかりしていた。少し取りすまして挨拶をしたよしは、しばらく奥へ入ったきりであったが、出て来たのをちらと見ると、別の華美な前掛になっていた。

としゑは、よしとせんと一緒に奥の間に寝るのであった。

「わたし、とってもうすぼんやりなの。どうぞよろしく。」

着物を脱ぎながらいうと、あら、おれこそと、よしははじめてうち解けた眼を向けた。

翌日は、姑に連れられて近所廻りをさせられた。どこの家でも、真白い紙乾板が庭一杯に立てかけてあるのを、くぐるようにして入って行った。大きなお腹を隠せるはずもなく、観念はしていたがやはり顔の上らない思いであった。惣吉が帰還したら、その時真似事の祝儀をするつもりだと、姑は一軒一軒大声で言って歩いた。旦那の家では縁起ものだからとそばを出された。

「なんにしても、丈夫な嬰児を産むことだな。」

眼鏡の顔を仰向け加減にして、ゆっくり喋る旦那の言葉は、村の言葉と標準語がごっちゃになっていた。広い縁側には、包装した紙が山のように積んであった。村の紙は皆ここから組合の名で積出される。わきの土蔵に手を入れてそこが組合の事務所になっていた。