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わし

和紙

東野辺 薫

「東北文學」1943(昭和18)年4月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 35,557 字 · 70 页

青空文庫

もっともそうは言い条、異性との交渉を微塵も持たずに征く木石の淡白さが、男性としての慕わしさに崇められる心をも、としゑは胸のどこかにひそめてはいるのだった。

「昨夜よっちゃんとも話したんですの。」

としゑが笑いながらそのことを言うと、んだかな、しかもさっぱりしていいと思うがなと友太も応じた。

「何せ俺は、惣吉みてえに、いい娘っ子が掴めなかったでな。」

友太には珍しい冗談だった。

「でも、誰か一人はいるかもわかんないわ。」

勢いで、としゑにもつい言わずにはいられなかった揶揄が口をついた。俺にかと、たじろがずには言ったが、内心すぐ思い当るもので友太はさすがに眼をそらした。それ以上続けたら、拾収のつかないことになりそうだった。

「お前らは暢気だで。今の俺は女の話どころでねえでな。」

それはわかってますわという声を背に靴の紐を結びながら、昨日彼の応召を知ったユミが、思い迫った顔でそっと土間に立った姿を思い浮かべてみた。ユミ、と、友太が一言呼びかけたら、さっと涙がにじんで来そうな瞳であった。良三郎君のところへは来なかったかやと、それはむしろ自分自身をぴしりと鞭つ言葉を咄嗟にかけて、みるみる冷たく褪せる相手の頬の痙攣をもはっきりと胸に感じた。