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よねんかん

四年間

山本 周五郎

「新青年」博文館、1946(昭和21)年7月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 18,135 字 · 36 页

青空文庫

疲れてくると、地下室からラム酒を持って来て、水で割って呑み、また書き続けた。どう書いても自分の心理を的確に表現することができず、書いたり消したりで夜の明けるのも気づかなかった。……次の夜も同じようにして明かした。

「橋本君がなおるまでしばらく休みにしよう」

そう云って研究所の仕事は中止した、そして昼のうちはほとんど寝て過ごし、夜になると日記を書き続けるのだった。

昌子は不安とおそれとでなんにも手につかなかった。原因はまるでわからないが、信三が自分から離れようとしていることだけは疑う余地がなかった。たしかに、彼は自分から去ろうとしている、だがそれはなんのためだろう、彼が昌子というものを見直したからだろうか、いざ求婚しようという時になって気にいらないところをみつけ、口では云いかねてそういう態度をとるのだろうか、――それとも、急に誰か心を惹かれる人でもみつかったのだろうか、いな昌子はその推測だけは否定することができた、彼女には信三がどんな青年であるかよくわかっていた、原因はいくら挙げることができても、その一つだけは除くべきだという確信がもてた。――本当のことが知りたい、原因さえわかって、それがどうしようもないことだったら自分はあまんじて彼から去ってもよい。