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よねんかん
四年間
山本 周五郎
「新青年」博文館、1946(昭和21)年7月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 18,135 字 · 36 页
二人は茶をすすりながら書斎の好みについてしばらく話した。どっちもそんなことに興味をもっているのではなかった。信三は医者から職業意識を脱ろうとし、医者はまた苦痛な問答にはいるのを少しでも延ばしたかったのだ。しかし会話は間もなく途切れた。信三は椅子の背にもたれかかりながら、ごく自然な軽い口調できりだした。
「ガス壊疽だということは戦地の病院で診断されました、帰還して来て、半年ばかり軍の病院にいたんですが、ご存じのとおり体に違和は感じないし、出征ちゅう放っておいた仕事を早く始めたかったものですから、退院しまして、そう、一年ほどたってからでしょうか、どうもはっきりしないので、親たちが心配して二三カ所で診てもらいました、その当時は膝関節あたりが問題だったようです」
「それはいつごろのことでしたか」
「おと年の冬、いや去年の二月ですね、一人の医者は大腿部から切断するように云いましたが、親たちが嫌いまして、他の医者からずっと治療を受けていました。しかしどうも納得がいかないんです。治療の見込みがないので対症的なことをやっている、そんな感じなんです。それで最近K大学の医科で、母校なもんですから、診てもらったのですが、現在やっている治療でよかろうと云うんですね、親たちはなにか聞いたようですが僕には隠している、たしかにそう思われる