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よねんかん
四年間
山本 周五郎
「新青年」博文館、1946(昭和21)年7月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 18,135 字 · 36 页
しかし寝室の扉を明けた瞬間、彼はほとんど叫びごえをあげそうになって扉口に立ちどまった。……寝台の側卓子の上にあるスタンドの灯が、青いシェードを透かしてやわらかい光を投げている、その光を横からうけて、寝台の前に昌子が立っていた、そればかりではない、昌子は燃えるような緋の長襦袢に伊達巻を締めているだけだった。ひきしめられた腰の線や、固く張っている胸乳のまるみが、なまめかしいというよりはむしろ誇らしげに明らさまだった。彼女は両手を下げ、顔をあげてまっすぐに信三のほうを見まもっていた。
「どうしたんです」
信三はひどくかわいた声で訥りながらそう云った、
「……これは、どういう意味なんですか」
「わたくし、まいりました」
昌子の声もおののいていた、
「……だって、こうしなければならなかったのですもの」
「こうしなければならなかった」
「ええ、どうしても」
信三は昌子の全身が見えるほど震えているのに気づいた、彼はひじょうな努力で冷静になろうとし、扉口から身を片寄せて静かに手を振った。
「お帰りなさい。あなたはなにか考え違いをしていらっしゃる、お姉さんの気づかないうちに帰っておやすみなさい」