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よねんかん

四年間

山本 周五郎

「新青年」博文館、1946(昭和21)年7月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 18,135 字 · 36 页

青空文庫

「僕の仕事は三年や五年で眼鼻のつくものじゃない、十年かかるか二十年かかるか、まだその見当さえついてはないんだ」

「ではなおさら、一日もむだにはできないと思います」

昌子は前へひと足すすんだ、

「……あなたは命が四年きりないと聞いて絶望しておいでです、けれど絶望なさるまえに考えていただけないでしょうか、人間の命が脆いもので、いつどんな死に方をするかわからないということを、……電車からふり落とされたり、自動車にはねられたり、まったく思いがけない出来事のために死ぬ人の数がどんなに多いかということを、あんなに注意ぶかい兄が死毒で斃れたのもよい例だと思います、それに比べれば四年という時間は無限のように長いといってもよくはないでしょうか、たとえ完成することがおできにならなくとも、四年のあいだにはずいぶんお仕事をすすめることができると思います、まして個人のアルバイトではなく破壊と惨虐の償ないに捧げるというお考えでしたら、どんなことをしてもお仕事を続ける責任があるのではないでしょうか」

信三は惹きつけられるように、昌子の顔を見、その言葉に聞きいった、昌子はその眼を燃えるような眸子でみつめながら、なかば夢中でこう続けた。