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じごくふうけい
地獄風景
江戸川 乱歩
「江戸川乱歩全集付録冊子 探偵趣味」平凡社、1931(昭和6)年5月10日~7月10日、9月10日~1932(昭和7)年1月8日、3月10日<br>メリー・ゴー・ラウンド以下「江戸川乱歩全集 第十一巻」平凡社、1932(昭和7)年4月10日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 53,774 字 · 108 页
「それがどうかしたって云うのか」
譲次が怖い顔で睨みつけながら聞き返した。
「だから、あんた、ちま子さんを殺したんでしょ。好きだから殺したんでしょ」
麗子は、まるでそれを楽しむかの如く、ズケズケと云ってのけた。
「云っていいことと、悪いこととあるぜ。お前、本当に俺が殺したと思っているのかい」
譲次の額にムクムク静脈がふくれ上った。
「だって、ちま子さんの殺されていたのは、この短剣とそっくりの兇器だったじゃないの。あんたの外に、こんな物騒なもの持ってる人はありゃしないわ」
「馬鹿っ。君は恋人を人殺しの罪人にしたいのか」
「だからよ。恋人だから、あたしにだけ、ソッとお話しよ。人になんか云やしないから」
「まだ云うかッ。畜生ッ」
譲次は猛獣の様に怒り出した。
「アレエ、いけない。もう云わない。もう云わない」
大柄で豊満で色白の麗子は、愚なるマゾヒストであった。彼女は余りにも心なき質問が、相手を芯から怒らせたことを知ると、俄に怖くなって、悲鳴を上げながら、血の池の岸を伝って逃げまどった。
怒れる猛獣の手には、一本の短剣が握られていた。それが洞窟の壁の蝋燭の赤い光りに、ギラギラと光った。