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じごくふうけい
地獄風景
江戸川 乱歩
「江戸川乱歩全集付録冊子 探偵趣味」平凡社、1931(昭和6)年5月10日~7月10日、9月10日~1932(昭和7)年1月8日、3月10日<br>メリー・ゴー・ラウンド以下「江戸川乱歩全集 第十一巻」平凡社、1932(昭和7)年4月10日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 53,774 字 · 108 页
食後麗子がただ一人で遊園を散歩していると、三谷二郎少年につかまった。
「麗子さんどうしたの? 何だか変だねえ。湯本さんと喧嘩したの?」
薄気味悪く敏感な少年であった。
「エエ、喧嘩したのよ。二郎さん、さあここへいらっしゃい」
麗子は何気なく云って、灌木のしげみの前の捨石に腰かけて、少年を膝の上に招いた。可憐なる美少年は、いつも大人の膝に乗りなれていたからだ。
「喧嘩って、どうしたの? なぜ喧嘩したの?」
「何でもないのよ」
「何でもなくはないよ。湯本さんも、麗子さんも、口を利かないじゃないか。変な青い顔をしてるじゃないか。どうしたのさ」
少年は、麗子の太った膝の上で、お尻をクリクリ動かして、甘える様に云った。
「僕心配してるんだよ、麗子さんが嫌いじゃないから」
「二郎さん、ありがと」麗子は、少年を抱きしめる様にして、「何でもないのよ。……でも、ひょっとしたら」
「ひょっとしたら、どうなの」
「ひょっとしたら、あたし、殺されるかも分らないのよ」
「エッ、誰に?」
「人に云っちゃ、いやよ。大変なことになるんだから」
「ウン、云わない」
「若しあたしが死んだら、万一よ、万一殺されたら、その下手人は譲次なんだから、あんたそれをよく覚といて、あたしがそう言ったと刑事さんに告げて下さいね。