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じごくふうけい
地獄風景
江戸川 乱歩
「江戸川乱歩全集付録冊子 探偵趣味」平凡社、1931(昭和6)年5月10日~7月10日、9月10日~1932(昭和7)年1月8日、3月10日<br>メリー・ゴー・ラウンド以下「江戸川乱歩全集 第十一巻」平凡社、1932(昭和7)年4月10日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 53,774 字 · 108 页
絵に書いた迷路なら、鉛筆でたどって行けば、訳もなく中心に達し、また入口に戻ることも出来ようが、本物の迷路となると、見世物の「八幡の籔知らず」でさえ、迷い込んだらちょっと出られぬものだ。
それを、迷う様に、迷う様にと、考えに考えて設計し、少しも隙間のない、高い樹木の壁で通路を作り、面積は僅か一丁四方程の中に、一里に余る迂余曲折の細道を作ってあるのだから、世界迷路史に通暁せる達人と雖も、その中心を極め、再び入口に引返すことは難中の難事である。
音に聞くハンプトン・コートの扇形迷路、ヴェルサイユ宮殿の方形迷路、なども、遠くこれには及ばず、強いて比類を求めるならば、歴史家の雄大なる幻想として残っている、古代エジプトの大ラビリンスであろうか。上下三千の部屋からなっていたという、あのべら棒な規模には比肩すべくもないけれど、その設計の理智的な複雑さに於ては、寧ろジロ娯楽園の迷路に団扇を上げなければならぬであろう。
さて、この怪奇物語は、右の難解なる迷路の中で行われた、いとも不可思議なる殺人事件を発端とするのであるが、その殺人事件に話を進める前に、一応登場人物のお目見えをさせて置かねばなるまい。