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じごくふうけい
地獄風景
江戸川 乱歩
「江戸川乱歩全集付録冊子 探偵趣味」平凡社、1931(昭和6)年5月10日~7月10日、9月10日~1932(昭和7)年1月8日、3月10日<br>メリー・ゴー・ラウンド以下「江戸川乱歩全集 第十一巻」平凡社、1932(昭和7)年4月10日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 53,774 字 · 108 页
「今夜、山の下で青い顔をした麗子さんに逢った。どうしたのかって聞くと、誰にも云っちゃいけないと云って、若しあたしが死んだら、その下手人は譲次なんだから、あんたよく覚といて、刑事さんに告げて下さい。と変なことを云った」
日記帳にはこんなことが書きつけてあった。そして、そのあとに、今度の犯罪についての二郎少年の感想がつけ加えてある。
「誰も気がついていない様だが、僕は譲次さんが、例のちま子さんの胸にささっていたのと同じ短剣を、沢山持っていることを知っている。僕は最初からあの前科者の譲次を疑っていたのだ。やっぱりそうだ。今夜の麗子さんの言葉で僕の考えが愈々本当らしくなって来た。皆にこのことを教えてやろうかしら。だが、麗子さんは誰にも云うなと云った。あの人の言葉にそむくのはいやだ。アア、どうしたらいいのだろう」
湯本譲次は迷路の中心で、麗子の死骸を写生していたという事実丈けでも、充分嫌疑をかけられていた上、今又こういう証拠物件が現われた。彼は最早のがれるすべはないのだ。
誰しも譲次が下手人だと信じた。殺人の動機が判明していなかったし、一人の男が同時に三ヶ所で、しかも一つは空中の風船の上、一つは複雑な迷路の中という風に、ひどく飛び離れた場所で、三重の人殺しを犯したなんて、何だか本当らしく思えなかったけれど、そういう