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つぼ

壺

山本 周五郎

「講談雑誌」博文館、1940(昭和15)年10月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 16,624 字 · 34 页

青空文庫

きりで外出もしなかった、そして昏れがたからひどく気温が冷えはじめたと思うと、初更の頃からとうとう雪になり、夜明けじぶんには三寸あまりも積って、なお霏々と降りつのっていた、「おでかけあそばさないでようございました」お島はあいそ笑いをしながらそう云った、「昨日はお三人ばかり本宮へお立ちでしたが、これではさぞお困りでございましょう」外記は明けてある窓から降りしきる雪を眺めていたが「……雪の山路もいいものだ」と呟くように云ったきり、いつまでも窓外を見まもっていた。……このあたりには珍しく、雪はまる二日降ってようやくあがった。春さきのように暖かく晴れあがった朝のことである、食事の後の茶を啜りながら、外記は小窓に倚ってうっとりと日をあびていた。その部屋は表から鉤の手にまがった廊下のはずれで、障子を開けると中庭が見え、小窓の外はこの宿の裏庭につづいている、……洗われたように新鮮な日光が雪に反射してぎらぎらと眼に痛いので、窓に凭れた外記は片手でその光りを除けながら、かなり遠い城山のあたりをうっとりと眺めやっていた。そのうちにふと、すぐ眼の前にある