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つぼ

壺

山本 周五郎

「講談雑誌」博文館、1940(昭和15)年10月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 16,624 字 · 34 页

青空文庫

を棄てたものだ、この五躰のいかなる隅にも我意をとどめず、御しゅくんのため藩家のため国のために、いつなんどきでも身命をなげいだす者のことを云う、生死ともに自分というものはない、常住坐臥、その覚悟を事実の上に生かしてゆくのがさむらいの道だ……、おまえの眼からみれば、武士は両刀を差し肩肱を張って、いばりかえっているもののように思うであろう、しかし実はまるで違う、武士はその一挙手一投足がすべて御しゅくんにつながり、藩家に国につながっている、自分の耻は御しゅくんの耻だ、さればこそ独りを慎み、他行に威儀を崩さないのだ、自分の威を張るためではなく、御しゅくんのおん名が大切なればこそだ、……しかもこれらのことは家常茶飯のうちに溶け込んでいなくてはならない、そうしようと努力をしているあいだはまだ本当ではない、起きていようと寐ていようと、独り居にも会席にも、あらゆる時と場合にそれと気づかずしてこの覚悟が生きていなければならない、その覚悟をかためるのが武道の神髄なのだ、……ちょうどおまえが自分では気もつかず、しかもなんの必要もないのに草を抜き瓦礫を選り棄てた