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なつのよのぼうけん
夏の夜の冒険
平林 初之輔
「文学時代 第二巻第九号」新潮社、1930(昭和5)年9月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 5,930 字 · 12 页
――つい橋の向こうで人殺しがあっても所轄外なら知らん顔しているんだね?
私たちがむきになって食ってかかったので巡査は、少なからずむっとしたと見えて、もう我々には相手にならぬ決心をしたらしい。明らかに敵意をもって横を向いてだまってしまった。
私たちも反射的に腹がたったので、子供をつれて、憤然として交番の前を立ち去った。
そして、別に行くとこもないので、また最前のカフェへ引きかえした。というのは、最後の客を送り出して、食堂の掃除をすました女給たちが、まだエプロンをつけたまま家の前へ出て涼んでいたからだ。
――お腹すいてるんだろ?
――うん。
――おい、何か食べるものがあったらこの子供に食べさしてやってくれ。
子供はだんだんなれてきて、女給が出してくれた椅子にくたくたとくずおれるように腰をかけた。
そして、バターをつけたパンをうまそうにむしゃむしゃ非常な速度で食べ出した。そのうちにライスカレーもできてきた。
食事をとると、子供は見る見る元気になって、こちらの問うことには、非常に明晰に何でも答えた。
――君は名前は何ていうの?
――しげるっていうの。
――いくつだい?