轻读日语

轻松读懂日语经典作品

ja-reading.com

轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。

おおえどおうごんきょう

大江戸黄金狂

野村 胡堂

「新青年」1939(昭和14)年11月~12月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 26,754 字 · 53 页

青空文庫

万田龍之助は、お染を振り返って「安心して待ってお出」と言わぬばかりの瞬をして見せ、男に従って、元来た小路を戻りました。

湯元から間道を入って、谷川を宜い加減遡った龍之助は、後ろに残したお染のことを気にし乍ら、何処ともなく導かれて行くのです。「出女入鉄砲」と言われた箱根の関で役人の前へ女を連れて出るのは、山路へ一人残して置くよりも危険だと思ったのでしょう。

「まだかな」

「もう直きですよ」

山裾を廻る時たった一言交した切り、それから又十二三丁、道は草叢に没して、次第に街道から遠くなる様子です。

「おや?」

気が付いて見ると、何時の間にやら、案内の男が見えなくなって居るではありませんか。山裾を一つ二つ廻るうちに、何処かの小径へ外れてしまったのでしょう。

「案内の方、案内の方」

二三度、その辺を往ったり戻ったりしましたが、何処にも見えません。

「若しや?」

万田龍之助は立ち止って後ろの方を透しました。山路に残して来たお染の事を思い浮べると、不気味な戦慄がゾッと背筋を走るのです。

龍之助は咄嗟の間に身を翻すと、元の道を疾風の如く取って返しました。山も木も、岩も見えません。