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おおえどおうごんきょう
大江戸黄金狂
野村 胡堂
「新青年」1939(昭和14)年11月~12月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 26,754 字 · 53 页
「あッ」
「どうなされた御僧」
「確かに此処に寝かして置いた筈だが、ハテ、不思議」
「どんな方?」
「十七八の、まだ前髪立の若い武家で」
「フーム」
山浦丈太郎は妙に思い当ります。箱根の間道へ、今日に限ってわけ登る十七八の若い武家、それが自分を敵と覗う、万田龍之助でないと誰が保証するでしょう。
丁度その時、其処から少し離れた草叢の中、大きな断崖を一つ隔てたところに、正体も無い万田龍之助を寝かして、頻りに介抱している女がありました。
「お滝さん、ヘッヘッヘッ、うまくやっているぜ」
「あッ――けえ六親分かい、おどかしちゃいけない、そんなところへ、汚ない面なんか出して」
「汚い面は御挨拶だね」
「こんなところへおびき出して、この若いのを締めたのはお前さんだろう」
白糸のお滝は、美しい顔を挙げて、押っ冠せるように極めつけました。
「冗談だろう、その武家をおびき出したのは俺だが、締めたのは俺じゃねえ」
「はてね」
「雌の方を知ってるかい、お滝さん」
「知らないよ」
「はてね」
厄介の貝六も仔細らしく雁首を曲げました。
「こいつは油断が出来ないよ。手柄争いは私と親分達ばかりじゃない。蔭にもっと凄いのが居て、恐ろしい事を企らんで居るに違いない」