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おおえどおうごんきょう

大江戸黄金狂

野村 胡堂

「新青年」1939(昭和14)年11月~12月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 26,754 字 · 53 页

青空文庫

赤崎才市は子供をからかう調子で、眼までつぶって見せるのです。

「いえいえこれは」

お染は懐を抱いたまま、後に断崖が口を開いて居ることも忘れて、ジリジリと下るのです。

「さてもしぶとい」

赤崎才市は、長いのをギラリと抜きました。鞘は大禿げちょろですが、中味は思いの外物凄く、夕陽を受けて、焼金のようにギラギラと光ります。

「あれッ」

お染はもう一歩退きました。

「危ないッ、後は谷だ、――この刀の方が、まだしも極楽だぞ」

ニヤリと笑う笑いがコビリ付いて、赤崎才市の苦渋な顔に、残酷な悪相がパッと拡がります。

「あれーッ」

町娘のお染は他愛もありませんでした。

前後の分別もなく、脅かされた鳥のようにパッと起上って、麓の方へ――、

「待て待て、聴きわけのない女だ」

赤崎才市の手が伸びると、お染の帯際を取ってグイと引戻しました。パッと燃ゆる紅の裳、夕陽が紅葉に反映して、才市の血を好む心をいら立たせます。

「ヒ、人、人殺しッ」

「馬鹿奴ッ、本街道は近い」

「た助けて――ッ」

若い最高音を本街道が近いと聴くと、手加減もなく張り上げるのです。

「えッ、面倒、俺を怨むなッ」

赤崎才市は小手を振りました。