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きだんクラブ〔せんごばん〕
奇談クラブ〔戦後版〕
野村 胡堂
07 観音様の頬
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 11,954 字 · 24 页
五
百体の観音様は、三つ四つずつ、米俵や炭俵に詰められ、荒縄で縛られて、五つ目から茶舟で本所枕橋に運ばれ、橋の側の古金屋の庭に積まれました。そしてそれを五つ六つずつ、大火を焚いて焼き始めたのです。
手も足も首も、バラバラになった金色燦爛たる観音様が、八月の真昼の太陽の下で、順々に火の中に投げ込まれました。あの時の凄まじい情景を、近代の名匠高村光雲先生が、その著「光雲懐古談」に詳しく書いて居ります。(其頃二十四歳の光雲先生は、あまりの痛ましさに師の東雲先生を説いて、その中から名作僅に五体だけを買い取ったということなども、その本の中に書いてある筈です)
名作中の名作天狗長兵衛の観音像も、同じ運命の下に置かれ、炭俵の中に外の観音像と同居して、庭の隅に積まれて居りました。
日の暮れる迄に焼いた仏体は五十八、五つは高村光雲先生に救われて、あとの三十幾つは、浅ましくも庭に積まれたまま、翌る日の運命を待っているのでした。
五
その晩、南郷綾麿と香折の祝言は、いとも慎ましく挙げられる筈でした。元の身分は兎も角、明日の米にも困る貧乏人同士で、どうせ大した事は出来る筈もないのですが、それにしても、綾麿と香折の祝言は、まことに徹底した貧しさでした。