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きだんクラブ〔せんごばん〕

奇談クラブ〔戦後版〕

野村 胡堂

07 観音様の頬

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 11,954 字 · 24 页

青空文庫

フィナーレ

「それでは香折、堪忍してくれるか」

「勘弁は私の方からお願いすることです。それより観音様の前で――」

「面白いな、観音様の前で夫婦の固めの盃をしよう。友吉兄哥は仲人だ――観音様はまさか嫉妬などはお焼きなさるまい」

「まア」

母親もツイ笑いました。

「灯をもっと殖やせ、観音様も笑って御座るよ。ちと剥げちょろになったが、木地が見えると金箔の時よりは不思議に明るく温かにおなりだ」

「よし来た、――それじゃ、高砂やアとやるぜ」

まさにそれは相馬の古御所の一カットでした。でも貧しく幸せな祝言は、こうして名作天狗長兵衛の観音様の前に営まれたのです。

フィナーレ

「私の話はこれで終りました。天狗長兵衛の観音様は、其後何処へ行ったかわかりませんが、せめて優れた芸術品を五体でも六体でも此世に遺した、高村光雲先生と、牙彫師南郷綾麿の手柄は小さくありません。

しかし大きく廻る時代の歯車には、何物を以てしても反抗しようの無いことも事実です。幾度かの偶像破壊時代を経ても、残るものは残ります。それが自然の力であるか、人間の力であるか、兎も角も時代の侵蝕を受けつつも、救世観音も百済観音も如意輪観音も吾輩の前に残っているのです。