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おんなはおなじものがたり
女は同じ物語
山本 周五郎
「講談倶楽部」大日本雄辯會講談社、1955(昭和30)年1月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 21,279 字 · 44 页
「今日の事は黙っているよ」
と三郎助は笑いながら云った。
その夜、――広一郎は紀伊に「もう大丈夫だよ」と囁いた。紀伊は怯えたような眼をした。しかし彼がごく簡単に話して聞かせると、さも安心したというふうに微笑し、急に熱でも出たような眼で彼を見あげて、嬉しそうにこっくりをした。
二人は親しくなるばかりだった。
陣場ヶ岡の事は二人の秘密であった。その秘密な事が、二人を他の人たちから隔て、密接にむすびつけるようであった。――すると、十月になった或る夜、寝間の世話をしながら、紀伊は「明日いちにちお暇がもらえます」と云った。祖父の七年忌なので、梶夫人に頼んで暇をもらった、と云うのである。広一郎はそうかと云った。紀伊はなにか訳ありげな眼つきで、微笑しながら彼を見た。
「若旦那さまも、明日は慥か御非番でございましたわね」
「そうだったかね」
「御非番の日ですわ」と紀伊は云った、「わたくし本当は、法事にはゆきたくないんですの」
「だって自分で頼んだのだろう」
「それはお願いしたんですけれど」
「しかもいやになったのか」
紀伊は含み笑いをし、斜交いに、広一郎を見あげた。彼は眩しそうに眼をそらした。