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おんなはおなじものがたり
女は同じ物語
山本 周五郎
「講談倶楽部」大日本雄辯會講談社、1955(昭和30)年1月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 21,279 字 · 44 页
「おやすみなさい」と彼は云った。さわ女も「おやすみなさい」と云い、寝間から出ていった。
安芸は用が済むと、一通の封じ文をそこに置き、挨拶をして出ていった。安芸はなにも云わなかったが、もちろん紀伊の手紙であろう、広一郎はすぐに取って封をあけた。
――わたくし必ずあなたのところへ戻って来ます、とその手紙に書いてあった。神仏に誓って、必ず戻ってまいりますから、それを信じてお待ち下さい。どうぞわたくしを呼び戻そうとしたり、会いにいらしったりなさらないようにお願い致します。
会いにきても自分は決して会わない、その代り半年以内に必ず、「あなたのところへ」戻ると、その手紙は繰り返していた。
「わかった」と広一郎は呟いた、「私はおまえを信じよう、紀伊、――待っているよ」
そして彼は待った。十二月になり、年が明け、二月になり、三月になった。梶家では毎年の例で、七人の小間使が出替ったが、すぐあとで、広一郎の結婚が行われることになった。
「安永さんを五年ちかく待たせました、これ以上お待たせすることはできません」とさわ女は云った、「広さんの女嫌いもなおったようだし、だって誰かを嫁に欲しいと仰しゃったくらいですからね」