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おんなはおなじものがたり
女は同じ物語
山本 周五郎
「講談倶楽部」大日本雄辯會講談社、1955(昭和30)年1月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 21,279 字 · 44 页
――初めからこんなにきれいだったのだろうか。
と彼は心のなかで自問し、同時に躯の内部が熱くなるのを感じた。
梶夫人はこの経過をひそかに注視していたらしい。ときどき彼にさりげなく問いかけた、紀伊はちゃんとやっているか、気にいらないようなことはないかどうか、などと息子に訊くのであった。広一郎はあいまいに答えた。ええよくやっているようです、まあよくやるほうでしょう、かくべつ気にいらないようなことはありません、などと答えた。
八月にはいってから、彼は紀伊と話をするようになった。ふしぎなことに、紀伊に話しかけるとき、彼は赤くなるのを抑えることができなかったし、紀伊もまた同じように、赤くなったり、躯ぜんたいで嬌羞を示したりした。
或る夜、――父と共同の書斎で、父と彼とが読書をしていた。八月中旬だから、季節はもう秋であるが、残暑のきびしい一日で、夜になっても気温が下らず、縁側のほうの障子も窓もあけてあるのに、微風もはいってはこなかった。竜右衛門は読みながら、団扇で蚊を追ったり、衿もとを煽いだりした。息子のほうを見ると、息子は机に両肱をつき、じっと書物を読んでいた。