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いかなるほしのもとに
如何なる星の下に
高見 順
「文藝」1939(昭和14)年1月号~1940(昭和15)年3月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 119,508 字 · 236 页
だが、世にはそれに舌鼓を打つ悪食家もあるのだ。私も悪食にかけては、そうヒケを取らぬつもりでいたが、これは……。
(いや、待て、俺もひとつ食って、――脆弱な神経を叩き直してくれようか。)
何か逞しくなれる秘法が、そこに隠されているような気もした。いやなのを我慢して食うと、神経が強靱になり、強靱で逞しい小説が書けるかもしれない、そんな気がしてきた。
そこはいわゆる大衆的な牛鍋屋で、夏頃、その横を通ると、いかにも田舎から出てきたばかりというのを丸出しにした女が、裏で枝豆を切っているのを、よく見かけた。赤いふくれた指を窮屈そうに鋏に入れて、地面に堆高く積んだ枝豆を、味気なさそうなのろのろした手付でポツンポツンと切っていて、表から店の女たちの派手な嬌声が聞えてくるたびに、その方に羨しそうな顔を向けていた。あたしも早く裏働きから店へ出して貰いたいわ、そんな顔が私の頭に残った。
(あの女も今では店に出ているかな。)
暖簾に顔を近づけるが早いか、
「いらっしゃい」
飛びかからんばかりの、――さすが熊鍋を食わすだけあって、全くもって猛獣のような女たちの声に、私は度胆を抜かれて飛びのいた。