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いかなるほしのもとに
如何なる星の下に
高見 順
「文藝」1939(昭和14)年1月号~1940(昭和15)年3月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 119,508 字 · 236 页
というのがそこで鳴らしていた時分、すなわち銀座の「ライオン」で「お近さん」が鳴らしていた時分のことだが(正確に言えば「お近さん」の時分よりすこしあとだが)、わざわざその「お絹さん」を張りに山の手から浅草へ通っていた人で、知人と心やすく呼んでも私より一まわり以上年上の、そしてカフェー通いをしていたというと何かヤクザな感じだが、今は堂々たる某会社の幹部、たとえば事変後大陸へ、ちょうど私などが省線電車で大森と浅草を行ったり来たりする程度のなんでもなさで幾度か飛行機で行ったり来たりしているといった人、その人と、その人が北京から帰って何日目だとかいう日に、私は会って、「この頃、どこで遊んどる」と問われて、「浅草で遊んでいます」と言うと、
「久し振りだ。行こう。――広養軒へ行こう」
その人にとっては、浅草といえば「広養軒」――という感じらしい。同じく銀座といえば「ライオン」という感じの人もあるだろうが、その「ライオン」のなくなった今日、「広養軒」が依然その時分のカフェーらしい感じで、そりゃ幾分違ってはいようが、それでもとにかく残っているのは、その人にとって、たとえ「お絹さん」