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いかなるほしのもとに

如何なる星の下に

高見 順

「文藝」1939(昭和14)年1月号~1940(昭和15)年3月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 119,508 字 · 236 页

青空文庫

――そんな軍需景気の奴なんかに、浅草の芸人をなめさせるようなまねをしちゃ駄目」

「お姉さん」

と美佐子がさえぎった。手袋をはめない手が、外の寒気で赤くなっているのを台の上にベタリとついて、

「ごめんなさいね。――あたし……」

「あやまることなんかないわよ。ミーちゃんはさぞかしいやな気持だったろうと思うと、あたしもつい腹が立って……。ミーちゃんが勝気なのは、あたし知ってる。よくよくだったろうと思うと、あたしだって腹が立つのよ。――お酒を大分飲まされたらしいわね。苦しそうね」

「ミーちゃん。水やろうか」

それまで黙っていた惚太郎が不意に言った。

「すみません」

「よし」いたわる声だった。

ジャーという水道の音のなかから、

「軍需景気か」

惚太郎のつぶやきが聞えた。

こうした晩であった。――その晩の十二時過ぎると二十五日で、三の酉がはじまる。十二時前から人々は鷲神社につめかけている。

どちらが誘うともなく美佐子と私とはお酉さまに出かけた。お酉さまの晩は、公園の食いもの屋は二時まで営業が許される。「聚楽」の前へ行くと、二時までの営業のため帰れなくなる店員を店へ泊らせる用意のものだろう、夜具蒲団をうず高く積んだトラックがとまっていた。