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いかなるほしのもとに

如何なる星の下に

高見 順

「文藝」1939(昭和14)年1月号~1940(昭和15)年3月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 119,508 字 · 236 页

青空文庫

そしてそれは事実であったのだが。

ではなぜ美佐子はお酉さまの晩に、自分から私に言おうとしなかったのだろう、それが私にはわからなかった。(美佐子が私に惚れていたためだろうか。)朝野の言葉を耳にして、美佐子のことを朝野が自分の創作だと言うだけにかえって創作的うそでなくて事実のように感じられて、ふとそう思うのだったが、

(――まさか)

私は激しく否定した。美佐子が私に惚れたなどとは、――考えられなかった、というより、考えたくなかった。その時、

「――ちわ」

と言って、思いがけない大屋五郎がひょっこり入って来た。

「やあ、倉さん」頓狂な声を挙げたとおもうと、彼に顔を向けた朝野に、いきなり、

「パッ!」例の手つきである。朝野はびっくりして飛びのいた。

「一丁上り!」そう言うと、パッと開いた左手を機械人形のように下にギクリと翻し、その上に右手をやって団子をこねるようなまねをして、

「――イケませんね」

部屋のものはどッと笑った。それまでは、お通夜のような重苦しい空気が部屋に淀んでいたのだが、彼の出現でそんな空気はたちまち一掃された。

「ゴロちゃん!」

「ゴロちゃんと呼べば、倉さんと答える」