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いかなるほしのもとに

如何なる星の下に

高見 順

「文藝」1939(昭和14)年1月号~1940(昭和15)年3月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 119,508 字 · 236 页

青空文庫

彼女はそれに答えず、慣れた手つきで、四つに切った肉片を素早く小皿に取ると、鉄板に残った肉汁が赤褐色の泡を立ててジジジと焼きつくのを、扁平のはがしで器用にすくい上げて皿に移し、

「このおつゆがおいしいわね」

そう言って、はいと皿を私にくれ、

「――あたしなんか、あきたわけじゃないんだけど」

つぶやくように言った。

じゃ、どうしてやめたのか。聞こうとして、あんまり立ち入りすぎると思って、控え、銚子に手をやると、

「お酌しましょうか」

「――いや、どうも」

銚子を取り上げて、私に注してくれた。白い、肌理のこまかい手で、指のつけ根にえくぼが浮ぶ。

「そりゃねエ」

ポツンと言って口を噤むのに、

「――え?」

と、私が言った。

「いえね、さっきの話」

ああそうかとうなずくと、

「そりゃ、あきてやめる人もあるかもしれないけど、でも、大概の人はあきてやめるわけじゃないと思うわ」

私は黙って盃を傾けていた。

「なんていうんでしょう。自然とやめなくちゃならないようになってるのね。そう思うわ」

最後の言葉を急に強く力むように言って、独りでうなずくと、

「あたしも、お酒飲もうかしら」

「あんた、いけるの?」