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いかなるほしのもとに
如何なる星の下に
高見 順
「文藝」1939(昭和14)年1月号~1940(昭和15)年3月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 119,508 字 · 236 页
私たちは階段を降りて、薄暗い、茶色っぽい電気の光の漂った台所に立った。アパートの人たちの共同炊事場である。その隅に、台所口のような(事実それに違いないが)アパートというものの玄関らしくない、アパートの玄関があった。――アパートの一階の、表通りに面したところは、建具屋、鰹節屋といった、いずれも店で、二階三階がアパートになっていて、アパートの玄関は、裏の路地にあった。そこで、私たちは、二階借りのものが遠慮しながら台所から外へ出るみたいな恰好で、汚い下駄の散乱した三和土に降り立った。――玄関の脇に便所があり、便所は何か似つかわしくない感じで水洗便所だったが、折からジャーという水道の水が奔流する音がすさまじく聞えた。
「どこへ行きましょう」
外へ出ると私が言った。月が路地の上にかかっていた。その夜にかぎって遠くへ飛び去ったみたいに、ひどく離れて小さく見えた。
「泡盛いこうじゃないですか」
「金は二三円ありますが。そうだ。お好み焼屋へ行きましょうか」
「いや、いや」
と朝野が首を振った。「下手な酒より泡盛の方がうまい」
アパートの付近に、十二時までに入ってしまえば、少々遅くなろうと追っ払われない泡盛屋があった。