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いかなるほしのもとに
如何なる星の下に
高見 順
「文藝」1939(昭和14)年1月号~1940(昭和15)年3月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 119,508 字 · 236 页
「――この人がね、湯たんぽを買おうかしらと言うんで……」
「湯たんぽ?」
取りすました女優さんと湯たんぽ。
すこぶる異様な感じであった。――見ると、荒物屋の店先に、卵形の湯たんぽが、これもちょっと異様な感じで、いくつかつながって、つりさがっていた。
銀座通りで、女優さんが、湯たんぽを買う気をおこすだろうか。その横町は浅草における銀座的な通りとはいえ、やっぱり銀座ではないのだった。
その通りの「ボン・ジュール」の片隅に、朝野と私と、小柳雅子とサーちゃんと、二人ずつ向い合って坐っていた。
――憧れの小柳雅子に、ついに私は会えたのである。その素顔、その肢体を、間近に、いくらでもみつめることができ、なんでも話のできる状態をついに持てたのである。
なんという喜び。――だが、喜びとともに、その時までは予期しなかった深い悲しみに、私は襲われていた。
会って、どうしようというのだ。私は私に問う。
「…………」
会って、何を話そうというのか。何も話しすることはない。
それでも、何か話しかけようとして、私は言葉を探したが、私の心はからっぽであった。
――朝野ひとりが、しゃべっていた。