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いかなるほしのもとに
如何なる星の下に
高見 順
「文藝」1939(昭和14)年1月号~1940(昭和15)年3月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 119,508 字 · 236 页
「昔の文士は浅草の矢場でなかなか遊んだものらしいですな」
と、言葉をつづけた。
「美妙斎などは矢場の女と問題をおこしたり、――その美妙斎に矢場遊びの手ほどきをしたのは、なんでも幸田露伴だという話だが、露伴というのは、当時矢場の遊びやそのあとからできたいわゆる銘酒屋をひやかすそのうまさにかけては、美妙斎などとてもおッつかない遊び人だったそうで、今の露伴からは想像もつかんことですな」
「なるほど」
「どうです。ちょっとした随筆のネタになるじゃないですか。奪っちゃいやですよ。――いや、書いたってかまわんです」
「…………」
私は雅子と話がしたかった!
だが、そんなような(私にとっては)碌でもない話を、朝野がひとりでまくし立てているうちに、実にあっけなく時間が過ぎた。
――時間が迫ったと、走るようにして行く雅子たちを楽屋口まで送って、そこで別れた。
実にあっけない感じだった。そのあっけなさのためもあったろうか、私は雅子と別れると、何か、――何かわからないが何かを失ったような悲しみにひしひしと迫られた。そうだ。会っている最中でも、わくわくと胸を躍らせながら、同時に悲しくて仕方のない私だったが、今や悲しみだけが私の心を領した。