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きせつのないまち

季節のない街

山本 周五郎

「朝日新聞 夕刊」1962(昭和37)年4月1日~10月1日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 201,379 字 · 394 页

青空文庫

「砂をどうしたんだって」良江がしゃべりだすと諸事こんがらかってしまうのが常なので、河口はべつの湯呑に自分で酒を注ぎながら反問した、「ほんとに頭からぶちまけちゃったのか」

「砂をぶちまけやしねえさ、まさか、そんなような心持だってことを云ったまでだが、てんでもう話にならねえ」と増田は酒を飲んで云った、「おめえと別れてからよ、おらあ湯へいって帰って一杯やってたあ、いやにつんけんしゃあがるんで、なにがどうしたときいたら、おまえさんの知ったこっちゃあねえ、といってそっぽを向きゃあがる、おれの知ったこってねえならそんなにつんけんするな、って云ってやったら、どうしてさ、と口返答をしゃあがる、どうしてってべらぼうめえと云いかけると、べらぼうとはなんだい、と突っかかってきゃあがった」

亭主に関係のないことで、亭主につんけんするのはべらぼうじゃねえか、と云うと、それじゃあおまえもべらぼうかいと云う。おれがなんでべらぼうだ。いつもあたしに関係のないことであたしに当りちらすじゃないか、番たびじゃないか、そうだろうと切返した。

「亭主にゃあ亭主の見識てえものがあらあ、なあ初つぁん」