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きせつのないまち

季節のない街

山本 周五郎

「朝日新聞 夕刊」1962(昭和37)年4月1日~10月1日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 201,379 字 · 394 页

青空文庫

らしい。としは大きいのが十五歳くらい、あとの二人は十二か十三だろう。ちゃんとした家庭の少年とみえて、シャツもズボンも流行の品だが、それをわざと崩して着こなし、威嚇的な、というのはどこか関節が外れたような、ぎくしゃくしたあるきかたでのしまわるのだが、われらの子供を発見するとインディアンのような叫び声をあげ、インディアン踊りをやりながら子供の周囲を踊りまわり、彼の小さな躯を小突いたり、頭の毛や耳を引っぱったり、提げている古鍋を奪って、中の残飯をぶちまけたりする。

子供は決して反抗しなかった。力の差を比較したからではなく、反抗するのがまったく無意味なことだと、よく理解しているかのように。また、それが避けられない災厄であって、この世に生きている以上、すべての者が耐え忍ばなければならないことだと、承認しているかのように。

ギャングどもがその遊戯に飽きて、彼を最後に突きのめすか、もう一つ殴りつけるかして去ると、初めて、子供は涙をこぼすのであった。

投げとばされた鍋を拾い集めながら、彼はなにも云わずに涙をこぼす。涙は子供の頬をぐしゃぐしゃに濡らすが、口でなにか云ったり、泣き声をもらしたりすることはない、そんなことは一度もないし、家へ帰ってから父親に告げるようなこともなかった。