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きせつのないまち

季節のない街

山本 周五郎

「朝日新聞 夕刊」1962(昭和37)年4月1日~10月1日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 201,379 字 · 394 页

青空文庫

の死躰などが捨ててあり、四季を通じて、この世がいとわしくなるような悪臭を放っていた。

六ちゃんはそのどぶ川をとび越える。そこは一種の境界なのだ。どぶ川の東側は中通りのある繁華街に属し、そこから西側は「街」の領分であって、どちらの人たちも、その境界を越えることはなかった。

これは「街」の住人たちが極めて貧しく、殆んど九割以上の者がきまった職を持たず、不道徳なことが公然とおこなわれ、前科者やよた者、賭博者や乞食さえもいるという理由から、近づくことをいやがられているのではなく、東側の人たちにとって、その「街」も住人も別世界のもの、現実には存在しないもの、というふうに感じられているためのようであった。

例のひねこびた櫟の脇をぬけるとすぐに、われらの「街」が見える。長屋が七棟、朽ちかかった物置のような独立家屋が五軒。一とかたまりではなく、寄りあったりちらばったり、不規則に、あぶなっかしく建っている。これらのうしろは高さ十五メートルほどの崖で、崖の上は西願寺の墓地であるが、墓地そのものは、竹やぶや雑木林に蔽われていて見えず、ただその高くて岩肌のあらわな崖の、威圧的な量感とひろがりが、「街」