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きせつのないまち

季節のない街

山本 周五郎

「朝日新聞 夕刊」1962(昭和37)年4月1日~10月1日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 201,379 字 · 394 页

青空文庫

そのころ日本にも幾らか金持がいて、国家将来の経済的みとおしが信用できないため、資産を外国に移すという操作が行われたか、行われようとしたかしたらしい。金持ならどこの国でも同じことをするようで、日本に限った話ではないが、ロータリアンは国際的な貴族・金持の友好機関だから、資産の国外逃避などにも便宜があったかもしれない。実際の理由はわからないが、少なくとも寒藤先生の講話のように、キリスト教の布教活動とは関連性がないであろう。

八田青年が涙ぐんだのは、先生の講話がいつも独創的に飛躍しすぎるためではない、また、冗長すぎて退屈だからでもなく、精神の高潔さに感動するためでもなかった。はっきり云ってしまえば、――この二人の関係をみているとわかるとおり、――要するになにも仔細はないらしい、先生の講話を聞いていると、その内容と理路とにかかわりなく、しぜんと涙ぐましくなり、現実にも涙ぐんでしまうというようすであった。

尤も、先生の講話が一つの問題に傾注することは稀であって、たいていの場合AからSへとび、BからKへとびCからD、そして急にAとかBに戻る、というあんばいであった。