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きせつのないまち

季節のない街

山本 周五郎

「朝日新聞 夕刊」1962(昭和37)年4月1日~10月1日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 201,379 字 · 394 页

青空文庫

「ぼくはあえてきみにきくがね、八田くん」と先生は終りに云った、「ナチスの党大会ごときに大ビスマルクが出席すると思うかね」

八田青年は反射的に口をあき、なにか叫ぼうとしたが、あぶないところで思い止った。眼に見えない手でぴたりと口を塞いだような感じであり、その反動で咳の発作におそわれた。

「ぼくは自分を誇りたいと思いますね、いまさらのようですが」咳きこんだため顔を赤くしながら塾生は云った、「これでぼくにも多少ひとをみる眼があるということがわかりましたよ」

「人生は深遠なりだ、まあ飲みたまえきみ」先生は考えぶかそうに云った、「人生は深遠であり変転はかるべからざるものだ、乾杯」

乾杯、と八田塾生も云った。

憂国塾とはいったいなにをする場所であろうか。字づらから推察すれば、国家の将来を憂うる塾であって、これを思想の左か右かといえば、まず右派に属するとみるのが一般であろう。煎じ詰めたところ、極端な破壊思想に対して、国家の伝統を守ろうとする立脚点に立っているわけだから、左派に属する人士の活動と正対して、なんらかの活動を致さなければならない筈である。もちろん、先生のいう「小物たち」