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きせつのないまち

季節のない街

山本 周五郎

「朝日新聞 夕刊」1962(昭和37)年4月1日~10月1日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 201,379 字 · 394 页

青空文庫

あの有名夫人団は施与をすることによって、自分の贖罪意識と優越感を満足させようとした。貧乏人ほどこういうことに敏感なものはない、かれらは自分たちの貧窮が利用されたことを知って怒ったのだ、聖書にちゃんと書いてある、右の手でほどこしをするとき、自分の左手にもそれを知らせるなど。

――なに簡単な話さ、とたんば老人は評した。かなえ夫人に反感をもたないのは、ここの人たちにとって、夫人が、同種属の者だということを感じているからだろう。

ではかつ子はどうなのだ、例をみないほどのはたらき者で、隣り近所の前まで欠かさず掃除をし、ぶきりょうなうえにぶあいそではあるが、誰に意地わるするわけでもないし、誰の邪魔にもならない。呑んだくれの怠け者で、一円の銭も稼がない京太を抱え、伯母と二人の内職仕事で生活に追われながら、中学にゆけないことさえ不平を云わない。

――そのかつ子をここの人たちは「がんもどき」と呼んで嘲笑する、しかも、かつ子に聞えてはわるいという遠慮さえもせずに。

――わるぎはないんだ、と人は云うだろうがね、とたんば老人は評した。わるぎどころか、みんなは憎んでいるんだな、どんなにはたらいても酬われない自分たちの境遇を、あの子がかたちにしてみせているように感じるからね。