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きせつのないまち
季節のない街
山本 周五郎
「朝日新聞 夕刊」1962(昭和37)年4月1日~10月1日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 201,379 字 · 394 页
かつ子はわかったというようにそっと頷いたが、やはり口はきかなかった。
ほぼ三週間のあいだ、かつ子は自分の能力の限度を知りたいとでもいうふうに、ひるも夜も休みなしにはたらいた。内職というものは常にあるとはきまっていない、二倍も三倍も重なることがあるかと思うと、十日の余も途切れることがある。かつ子はその「途切れる」ことをなによりも恐れた。それには仕事をよそより早く、しかも他の人たちより巧みに仕上げなければならない。つまり、「あの子の仕事なら確かであるし早い」という評価を取る必要があった。ひるも夜も、休みなしにはたらくかつ子の頭は、絶えずそのことを考え、その考えに支配されていた。
京太は酒呑みにも似あわず、三度の食事を欠かしたことがない。外で飲んでいるときでも、めしの時間には必ず帰って来て喰べる。そのうえお菜には三食とも魚か肉を要求し、味噌汁もなくてはならなかった。
「だめだね、この鯖はいかれてるよ、この皮を見な」京太は皿の煮魚を箸で突つきながら云う、「いきのいい魚は皮がちゃんと付いてる、これを見てみな、こんなに皮がびらびら剥がれてるじゃないか」
「またこまぎれか」