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きせつのないまち

季節のない街

山本 周五郎

「朝日新聞 夕刊」1962(昭和37)年4月1日~10月1日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 201,379 字 · 394 页

青空文庫

そこで京太自身が眼をつむったのだが、つむった眼の裏にかつ子のみひらいた眼がみえるというようすで、すぐに眼をあき、眼をつぶれ、とするどい声できめつけた。

かつ子の唇がゆっくりひろがって、歯がみえた。微笑したようでもあるし、あざけっているようにも感じられた。京太は骨まで凍るほどぞっとし、慌ててまた眼をつむった。かつ子はついに眼をあいたままでいたし、一と言も口はきかなかった。

「女ってものはなあ、おやじ」京太はのんべ横丁の、おでんの屋台店で飲みながら、店の老人にそういった、「――十五でも三十でもおんなじようなところがある、三十四、五にもなるのに、或るときひょいと見ると、十四、五の娘っこのようなあどけない顔つきをしていることがあるし、また、十四、五の娘のくせにひょっとすると、三十五、六の女みたような眼で、じろじろ男を見ることもある、――魔ものだねあれは」

「たいしょうが女の話をするなんて、珍しいじゃありませんか」

「女ってものはな、おやじ」京太はなお云った、「あれは人類学で論ずべきもんじゃないぜ、あれは博物学、――いや、妖怪学、でもねえか、むしろあれは、うん、やっぱり妖怪学の対象だぜ」