轻松读懂日语经典作品
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きせつのないまち
季節のない街
山本 周五郎
「朝日新聞 夕刊」1962(昭和37)年4月1日~10月1日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 201,379 字 · 394 页
或る日、おたねは黙ってかつ子を伴れだし、本通りから電車に乗って、中橋の仁善病院へいった。そこは建物も古いし医者もへぼだが、診察料が安いので知られていたのだ。――病院では、いま婦人科の担任がいないのでと、院長がざっと診察をし、妊娠に紛れのないこと、二カ月めの終りごろだろうこと、母躰に異常のないことなどを告げた。おたねはそれとなく、人工流産がしてもらえるかどうかと、さぐりを入れてみたら、院長もさりげなく、まだ成年未満であるし、親や良人の承認と、しかるべき費用が出せるなら不可能ではない、というような返辞をした。しかるべき費用とはおよそどのくらいかと、おたねがさしさわりのないようにきくと、院長もさしさわりのないような調子で、およその金額をもらした。
おたねは病院を出て、かつ子と裏通りをあるいて帰りながら、相手は誰だときいた。かつ子は診察のあと待合室にいて、伯母と院長の会話は聞かなかったから、相手は誰だという質問が、すぐに理解できないようであった。
「隠してもしょうがないよ」おたねは事実を話してから云った、「おまえ自身のことだからね、あたしには関係のないことだし、どんなわけだったにしろあたしはなんとも思やしないからね、本当のことをお云いな、相手は誰だったの」