轻读日语

轻松读懂日语经典作品

ja-reading.com

轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。

きせつのないまち

季節のない街

山本 周五郎

「朝日新聞 夕刊」1962(昭和37)年4月1日~10月1日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 201,379 字 · 394 页

青空文庫

「やい、光子、出ていけ」彼はじだんだを踏み、どぶ板がはねあがった、「光子のやろう、ぼくはもう別れるぞ、――やい、出ていけーっ」

ろじを挾んだ左右の長屋から、なにごとかと思って、住人たちがとびだして来た。福田くんは寝衣ゆかたに細紐をしめただけで、前がはだかり、貧弱な胸と、生気のない足があらわに見えた。

「顎のところに歯形があったよ」あとでかみさんたちがそう話しあった、「あれはおかみさんに噛みつかれたんだよ、きっと」

「よけいなお世話かもしれないけど、あたしゃあんな夫婦喧嘩を見たのは生れて初めてだよ」とべつのかみさんはいった、「夫婦喧嘩で出ていけはいいけどさ、亭主がうちの外へ逃げだして、うちの中にいるかみさんに向って外から、出ていけーってどなるなんて、いったいあれはどういう勘定になってるのかね」

「わる気はないのさ」年増のかみさんの一人が面白そうにいった、「たまにはあのくらいの人がいてくれなくっちゃあね、長屋の空気が浮き立たなくっていけないよ」

こういうわけで、福田くん夫妻は一遍に、この長屋のにんきをさらったのであった。――毎朝、相沢七三雄が階下から呼び起こし、朝めしが済むと、二人はつれだって仕事にでかけ、夕方もいっしょに帰って来た。