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きせつのないまち
季節のない街
山本 周五郎
「朝日新聞 夕刊」1962(昭和37)年4月1日~10月1日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 201,379 字 · 394 页
それから三年経つうちに、ふきが死に、おるいさんが死んだ。ふきは長女のはると同じ結核であるが、奔馬性という悪質のもので、二カ月の自宅療養ののち、あっけなく死んでしまったのだ。おるいさんも結核で、これは肺と腸と淋巴腺がおかされてい、発見されたときには手のつけようがなかったといわれる。――こう書くと極めて単純なようだが、事実もまた単純そのものであった。悲劇は長女の死から始まったようにみえるけれども、それはかたちにあらわれた面だけのことで、原因はおそらく慶三とおるいさんとが結婚したときから始まった、というのが正しいようだ。あらゆる生物は誕生と同時に死に向って行進する、などという安っぽい屁理屈はごめんをこうむる。塩山家では結婚したとたんにおるいさんが采配をとった。なにかの策略とか暴力によるのではなく、しぜんとそういう結果になったのであり、勤勉、質素、温順、倹約などの家風もそのときに確定したのだ。――長女のはるからおるいさん自身の死に至るまで、この家風は標準時計の針の如く正確に動き、正確にその数字を出したのだ。そこにはロマンスもなくユーモアもなく、人間味さえもなかった。