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きせつのないまち

季節のない街

山本 周五郎

「朝日新聞 夕刊」1962(昭和37)年4月1日~10月1日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 201,379 字 · 394 页

青空文庫

寒藤先生は島さんを、政界の問題へひきずり込み、そこへ釘付けにしようとした。島さんは明らかにその問題が嫌いとみえ、そこから脱出しようとして、持ち技のある限りをこころみているようであった。

「そうだ、そうだ」とついに島さんは云った、「あなたはライガー総理にそっくりだ」

島さんはついに、政界問題からの脱出口を発見したことを知った。彼は猛牛に鼻環をはめたのであった。

寒藤先生の表情がなごやかになり、口が横へぐっと一文字にひろがった。

「僕は誰かに似ていると思っていたんだが」と島さんは云った、「そうだ、まちがいなく浜内ライガー首相だ、あなたのその口のあたりは総理にそっくりだ、ねえ諸君」

富川十三夫が初めて、ライガーとはなんですかと質問し、島さんが、それはライオンとタイガーと交尾して生れた混血獣であり、だがそれは「一代限り」で、後継者は生れない、と説明するあいだに、寒藤先生の口はますますしっかりと、あたかも浜内ライガー首相それ自身であるかのように、横へひろがり、上唇にふくらみをあらわしていた。

「うん、人は可愛がっておくもんだよ」と寒藤先生は表情を崩さないように、注意しながら云った、「――彼が某省の次官でくすぶっておったころ、僕は大夕紙の社会部長だったが、みどころのあるやつだと思ったから局長の反対を押しきって、彼のため