轻松读懂日语经典作品
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きせつのないまち
季節のない街
山本 周五郎
「朝日新聞 夕刊」1962(昭和37)年4月1日~10月1日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 201,379 字 · 394 页
安八百屋の近所には二疋の雄猫がいるし、甘露堂というたいそうな看板を掲げた駄菓子屋には、猫でも犬でも生き物さえ見れば石を投げたり、棒で叩いたりする六歳ばかりの女の児がいる。――とらにはこれらすべてが、退屈なほどみえすいていて、いまさら注意をひかれたり、好奇心を唆られたりする対象はなにもないのだ。
「ふん、いつものとおりだ」と彼は呟くようである、「こんな変りばえのしない生活を繰り返していて、よくもやつらは飽きないもんだな」
中通りを北へゆくと橋がある。掘割に架けた石の橋で、それを渡り、二た筋目の横丁を構わずとおりぬけたところに、本通りがあり、流行のトップをゆくと称する、各種の商店や貴金属店、服飾店、キャバレー、銀行、百貨店、レストランなどが軒を並べてい、道の中央に市電、車道にはトラックや自転車、多種多様な自動車などの往来が絶えなかった。
とらがここへ来るには目的があった。それは、この本通りを横切った向う横丁にある、「天松」という本格的なてんぷら屋なのだ。
本格的といったが、それはおくにさんのやっている五色揚げに対してのことで、事実は「駄てんぷら」であり、その故にまた下町の客にはよろこばれていた。