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あんごしんにほんふどき
安吾新日本風土記
03 第二回 富山の薬と越後の毒消し≪富山県・新潟県の巻≫
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 22,916 字 · 46 页
第一ケロリンという名前に私の感覚が反撥するのである。私もタメシにケロリンをのんでみたいと思ったが、薬屋へ行って「ケロリン下さい」と云ってみる勇気がなかったのである。私は旅から戻ると女房に云った。
「富山の薬じゃケロリンというのが一番売れるんだってさ。タメシにのんでみたいと思ったが、薬屋へ行って、まさかケロリン下さいとも云えないじゃないか」
すると女房が言下に答えた。
「ケロリンならウチにありますよ。私は毎日のんでるのよ。ほかに鎮痛剤もたくさんあるけど、これも、これも、これも(と茶ダンスの中から色々な鎮痛剤の箱をとりだして)みんなダメ。ケロリンが何よりきくのよ。皆さん、そう仰有るのよ」
女房というものは亭主の知らないうちに何をしているか見当がつかないものだ。毎日ケロリンをのんでいるとは知らなかったね。薬屋へ行って「ケロリン下さい」と云うにはよほどの度胸がいるものと思っていたのだが、女というものは実は大そう度胸のよい動物に相違ない。すくなくとも私の友達でケロリンのんでる男というのは一人もいませんね。男の方が見栄坊なのかも知れない。しかし、女のケロリン的実質主義というものはどうも肉体的な厭味があって妖怪じみているようだ。