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あんごしんにほんふどき
安吾新日本風土記
03 第二回 富山の薬と越後の毒消し≪富山県・新潟県の巻≫
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 22,916 字 · 46 页
しかし最も売れるのはカゼ薬と鎮痛剤のケロリンだそうだ。私たちが富山を案内していただいた堀田善衞君のお母さんは、
「ケロリンはよくききますよ。あれだけは富山の人もみんなのんでいますね。私たちの同窓会でハンドバッグにケロリンいれてない人がなかったほどです」
と云った。「富山の人も――」というのは、富山の人はあんまり富山の薬をのんでませんという意味だ。もっとも富山の人が富山の薬をのまないのではなく、日本全体に富山の薬が行きわたっているとはいえ、薬全体の中で富山の薬がのまれている割合は何程のものでもない。富山の人が富山の薬をのまないのではなくて、彼らも全国なみにしか自分の薬をのんでいないという意味だ。それは富山の薬に限ったことではなく、各地の製品が自由に流通している今日に於ては、同じ現象はどの土地のどの製品についても云えることだ。したがって富山でケロリンがのまれているということは、全国的にケロリンがのまれているという意味でもある。しかし私は堀田君のお母さんの言葉だけでは信用していなかった。ケロリンがそんなにきくはずはないと思ったのだ。やっぱり土地ビイキのせいだろうと考えた。