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あんごしんにほんふどき
安吾新日本風土記
03 第二回 富山の薬と越後の毒消し≪富山県・新潟県の巻≫
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 22,916 字 · 46 页
なぜなら、私たち小説家のところへだけでも、各製薬業者からしッきりなしに新薬や流行薬の見本が送られてくるほどだからである。ところが富山のメーカーはわれわれに見本を送る必要もないのだ。彼らの売人は、人に厭がられずに、直接品物を持ってあらゆる家庭を訪問できる宣伝カーであり移動商店でありうるからだ。
しかし富山のメーカーと同じように富山の帳主や売人たちも、自分たちの特権についてはそれだけの自覚をもたない。彼らは自分たちの営業が旧式なものだと卑下しており、町内まわりの御用聞きを全国的にしたほどのものだという程度の積極的な見解すらも見出すことができないのである。
「薬が売れるのは都会です。農村では売れませんね。なぜなら、農村では薬をのむことを知らないからです」
と富山の売人はただこぼすのである。都会の人たちは薬について一応の知識がある。自分の病気を判断して薬を選んでのむことを知っており、その際富山の薬袋が自宅にあるのに気がつくと、その薬をのんでくれる可能性が多いというのである。ところが農村の人々は病気の時には薬をのむものだという習慣すらも持たないとこぼすのだ。