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あんごしんにほんふどき
安吾新日本風土記
03 第二回 富山の薬と越後の毒消し≪富山県・新潟県の巻≫
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 22,916 字 · 46 页
村のほぼ全部が砂丘であるから、この村には現在でも水田が八十町歩しかない。昔は全然水田がなかったであろう。この八十町歩から現に二俵供出しているそうだが、供出は水田の所有者が個人的な所有量に応じて為すものであるから、むろん村人の多くは水田を所有しておらず、八十町歩を村人全体に割れば供出どころか二三ヵ月の食い扶持にしかならない。つまり村人は昔から百姓でありながら自分の食う米を作ることができなかった。エンエンたる大砂丘にとぼしい畑を耕しつつ、主食を買うか、買う金がなければ米を食わずに生きて行くか、どちらかの貧しい生活をしなければならなかったのである。
百姓ではどうしても生活がたたないために、村の女が毒消しという行商にでるようになった。この事情は今日でも同じである。米のない貧乏村。村長すらもそう説明する。百姓が今でも米を買って食わなきゃならないのですから、女が毒消し売らなければやってかれやしませんよ、と。
この村役場が部落の入口にあって、旅人が最初に見る建物が村役場なのだ。これがまた世にも汚いボロ建物で、一押しでつぶれそうなボロ小屋だ。だから村役場を訪問して村長の話をきいて、それで毒消し部落の事情がよく分りましたと戻ってしまえば、この旅人はとんでもない錯覚をしたことになるのである。