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あんごしんにほんふどき
安吾新日本風土記
03 第二回 富山の薬と越後の毒消し≪富山県・新潟県の巻≫
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 22,916 字 · 46 页
なぜなら、この村全体でボロ小屋といえば、この役場と役場につづく小学校の建物だけなのだ。
部落の中へ踏みこむ。奥へ踏みこめば踏みこむほど、ものすごい。貧乏たらしいボロ小屋や貧しそうな農家なぞは見当らない。半数は農家という構えですらない。邸宅というべきだ。それらは門構えをもち、土蔵や倉をもち、石組みの塀をめぐらし、庄屋の屋敷かと思うのが無尽蔵に次から次へ現れ出でてくるのである。
これらの部落の周辺へ行くと、なるほど畑はいよいよ物悲しくなる。急斜面の砂丘までみんなキレイに耕して、食うために猫の額まで必死に畑にしているような悲しい村の歴史が感じられないことはないが、それは堂々たる邸宅まがいの農家がなければの話である。堂々たる民家の点在したそれらの傾面の畑はいわば美の境地である。金持の旦那方が人工の庭なぞでは物足りなくなって、砂丘の斜面を畑にして、その盆景を楽しみ味っている雅風の境地の如きものを感じさせる。(グラビヤ参照)一部の風景がそうではなくて、部落全体がそうなのだ。行けども行けども、ますますそうだ。煙草屋がある。農村の煙草屋ならば、煙草はせいぜいバットか新生だが、ここでは店頭に山とつまれているのがピースであり光である。