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あんごしんにほんふどき
安吾新日本風土記
03 第二回 富山の薬と越後の毒消し≪富山県・新潟県の巻≫
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 22,916 字 · 46 页
学校で習う必要はない。改良なんぞクソくらえという考えですよ。越後の農村には商業学校をつくれば満員うたがいなしというものです。だから二毛作なんてえものは、百姓が元のように貧乏にならないと考えられないことなんです」
そして商業や工業を卒業しても、その方面へすぐ就職するというのは稀れで、たいがい家の手伝いをして農閑期にはブラブラしている。さて嫁をもらって一軒もつ年齢になるとはじめて慌てて就職さがしをやってみるが、その年齢ではおいそれと職がなく、それでも二男三男が労力を提供するかぎり現状では農家は一応生活にこまらない。二毛作をするまでもないというのである。
その反面に、芸者にでる娘の種はつきないのである。そしてその娘たちは天真ランマンで明るいのだ。これはいったいどういうわけだか、もう私には見当がつかない。この土地の伝統かな。土蔵も倉もありながら、年のうち十ヵ月も故郷をはなれて毒消し売りをする境地や伝統と同じものなのだろうか。たぶん同じようなものではないかと私は思う。新婚そうそうですら亭主と別れて年に十ヵ月の毒消し売りをする。しかも家には土蔵も倉もある。四十四五に至るまで人生の花やかな盛りを強いて孤独な行商につぶしてしまう根拠がいまでは全く失われているはずなのだ。