轻松读懂日语经典作品
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さむはし
寒橋
山本 周五郎
「キング」大日本雄辯會講談社、1950(昭和25)年2月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 18,416 字 · 36 页
――目黒から来たおとりという女中がいて、それに持たせて来るんだが、……おまえが今そうしているそこんところに跼んで、いつまでも私の釣るのを見ている、……おとりは眠いさかりだから迷惑なはなしだ、よくいねむりをしたっけ、……そうするとおっ母さんも笑いながら、しかたなしに帰ってゆくんだが、……その笑い声がまだ耳にのこっているようだ。
お孝にもそのようすが見えるようだった。病弱な母と温和で実直な父との、互いに劬りをこめた静かな愛情、初冬のやわらかい日ざしのような、透明な暖かい愛情、それがお孝にだんだんとわかってきた。
――お父つぁんがあとを貰わないのも、よそに好きな人をつくったり、浮気をしたりしないのも、亡くなったおっ母さんが忘れられないからだ、二人はそんなにも愛しあっていたんだ。
お孝はそう思った。世間では男は浮気で悪性と定説になっている、そういう事実も見たり聞いたりする。父のような人はおそらく稀だろう、とすれば男なんていやらしい、どんなことがあっても結婚なんかしない。……こんなふうに一つの信条さえもつようになった。躯のほうも発育がおそかったらしいが、父親のほかには男などまっぴらという気持だった。