轻松读懂日语经典作品
ja-reading.com
轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。
さむはし
寒橋
山本 周五郎
「キング」大日本雄辯會講談社、1950(昭和25)年2月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 18,416 字 · 36 页
以外には、横丁へも曲らないというくらいに、忠実に妻に仕えとおした。
妻が亡くなってから、当然あとのはなしがいろいろ出た。しかし伊兵衛は柔和にうけながすばかりで、どうしてもあとを貰おうとはしなかった。……お孝にはやく婿を取らせようという、周囲の人たちの気持には、そうしたあとで伊兵衛を隠居させ、しかるべきのちぞえを持たせようという、含みがあったのである。
――ねえお父つぁん、どうしておっ母さんを貰わないの、ねえ、おっ母さん貰ってよ。
十二三のお孝はそんなことをよく云った。それから暫く経つと、常磐津やお針の稽古へいって、そこで聞く世間ばなしが、しばしば男女間の艶聞に属し、ことに男というものが浮気で悪性だという定説になっていることを知り、こんどは父親に対する不信と疑惑に苦しめられた。……伊兵衛はその前後から釣り道楽をおぼえて、ときどき夜釣りなどにいって朝帰ることがあった。そんなときお孝はあて推量で、父親がよそに愛人をかこっていて、その人のところへ泊りにゆくに違いないと思い、胸が半分に縮まるような、呼吸困難に近い苦しい気持におそわれるのであった。
――ねえ、本当に釣りにいったの、よそへ泊ったんじゃないの、ねえ、本当に釣りにいったの。